質問をいただきました!-副業トラブル(その②)|ウィンベル式無敵の労務管理Vol.35

質問をいただきました!
-副業トラブル その②-

ウィンベルの山口です。
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金曜日の今日は、「ウィンベル式無敵の労務管理」を配信します。
さて、本題です。
今回は、前回に引き続き副業先の責任についてお話したいと思います。
裁判例はこちらでした。
- 大器キャリアキャスティング事件(大阪高判令和4年10月14日)
-
事案の概要
Xは、Y社と雇用契約を締結し、ガソリンスタンドで深夜帯のシフト(主に、午後10時~翌午前2時まで)で勤務していた。
Xは、A社とも雇用契約を締結し、同じガソリンスタンドで午前7時から午後10時までの勤務をしていた。
なお、Xが勤務していたガソリンスタンドは、A社のガソリンスタンドであり、A社はY社に対してガソリンスタンドの運営を委託していた。
Xは、休みなく勤務していたため、体調を崩し、安全配慮義務違反等を理由にY社及びA社に対して、損害賠償請求をした。
Y社のマネージャーは、Xの体調を考慮して、事前にA社との雇用契約に基づく就労をやめるように求め、それに対してXは了承していた。
結論- 本業先(Y社)の責任:安全配慮義務違反あり
- 副業先(A社)の責任:安全配慮義務違反なし
今回は、副業先の責任についてお話したいと思います。
大前提ですが、副業はあくまでも労働者の私的な時間を利用している、つまり本業先の拘束時間外に行われていますので、基本的に副業先が積極的に本業先の就労状況を把握すべきであったとは言えません。
基本的に副業先には責任は生じないと言えます。
もっとも、副業先が常に安全配慮義務に違反することはないとは言えませんので、一定の対策は必要になります。
具体的には、
- 可能な限り、本業先の労働状況を把握する。
- 労働者の健康状態について確認する。
- 本業先での長時間労働や労働者の健康状態の悪化を認識した場合には、就労しないように促す等の措置を講じる。
最後に、前回の質問への回答をまとめたいと思います。
質問はこちらでした。
いつも有益な情報をありがとうございます。
先日の副業の記事で、副業を認めた場合、労務管理が複雑になることは理解しました。
一方で、今後は副業を認めざるを得ない状況になると思います。
そうした中で、副業が原因で過重労働等のトラブルになった場合、本業先と副業先との責任問題はどのような形になるのでしょうか?
クライアントが本業先になる場合も副業先になる場合もあると思うので、それぞれの立場で責任を回避(もしくは責任を軽減)するためにどのような対策が考えられますか?
1.副業が原因で過重労働等のトラブルになった場合、本業先と副業先との責任問題はどのような形になるのでしょうか?
本業先、副業先それぞれが負う安全配慮義務に違反があるかを具体的な事実に即して違反があるか否かによって責任の有無を判断することになります。
一般的に、本業先の方が責任が認められやすくなります。
2.クライアントが本業先になる場合も副業先になる場合もあると思うので、それぞれの立場で責任を回避(もしくは責任を軽減)するためにどのような対策が考えられますか?
- 本業先
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- 労働者の自己申告により副業先の労働状況を定期的に把握する。
※今回の裁判例のような特殊なケースでは、自己申告ではなく本業先が積極的に把握する。 - 労働者の健康状態に異変がないかを定期的に確認する。
- 長時間労働や健康状態の悪化を認識した場合、本業のシフトを入れない、本業の時間外労働を抑制、副業をやめるように求める、副業の許可を取り消す可能性を予告するなどの措置を講じる。
- 労働者の自己申告により副業先の労働状況を定期的に把握する。
- 副業先
-
- 可能な限り、本業先の労働状況を把握する。
※積極的に把握する必要まではない。 - 労働者の健康状態について確認する。
- 本業先での長時間労働や労働者の健康状態の悪化を認識した場合には、就労しないように促す等の措置を講じる。
- 可能な限り、本業先の労働状況を把握する。
本日は以上です。
次回は副業先の対策を見ていきたいと思います。
それでは、よい一日を。
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