ウィンベル式無敵の労務管理Vol.23
従業員による不正行為を就業規則でどう防止するか
-その④-
ウィンベルの山口です。
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金曜日の今日は、「ウィンベル式無敵の労務管理」を配信します。
さて、本題です。
本日は、読者の方から質問があったので、その質問に回答したいと思います。
- 質問
- そもそも、なぜ人(従業員)は不正行為をするのでしょうか?この部分が明確になれば、より効果的な対策を打てるのではないかと思いました。
というものです。いい質問ですね。
この点について、経営リスクマネジメントの分野で多くの研究が積み重ねられています。
多くの理論があるのですが、今回は、クレッシーの不正のトライアングルを紹介いたします。
この理論は、人が不正を犯す要因をモデル化した理論で、
つまり、この3つの要素が揃わないような対策を取っておけば不正が防止できるということになります。
では、それぞれの要素を見ていきましょう。
①機会
これは、不正を行うための手段や環境が整っている状態を指します。
たとえば、監視が不十分、内部統制の不備、パスワード等の管理不十分などです。
このような環境に悪意ある人物が置かれると、不正を犯す可能性があります。
②動機
これは、人が不正を犯す心理的誘因のことです。
たとえば、お金に困っている、社長に恨みがある、会社からの過度のプレッシャー(過大なノルマなど)、行き過ぎた出世欲、ミスの隠ぺいなどです。
このような状況に置かれると人は不正を働きやすくなります。
もっとも、動機については、基本的に外部からの把握が困難なため、企業としての事前の対策は取りにくい要因になります(強いて言えば、抽象的にはなりますが、従業員との信頼関係の構築などになります。)。
③正当化
これは、不正行為を正当化する思考過程を指します。
たとえば、「他の人もやってるからいいや」「会社のためだから仕方ない」「会社のためにこんだけ尽くしているんだからこれぐらいいいだろう」などです。
正当化については、個人の倫理観や道徳観に左右される部分も大きいですが、企業の文化等にも大きく左右されます(たとえば、組織的に不正を行っている企業など。)。
つまり、不正を許さないという企業文化・風土を醸成することで、正当化を緩和することができます。
不正のトライアングルをもとに不正防止対策を考える
以上の不正のトライアングルをもとに不正防止対策を考えると以下のようなことが考えられます。
- 「機会」→内部統制の整備
- 「動機」→透明性の高い組織の構築
- 「正当化」→コンプライアンス教育の強化
具体的には
- ①機会
- 職務分掌、定期モニタリング、決裁・検証プロセスの構築など
- ②動機
- 適切な評価制度の設計、風通しの良い組織づくりなど
- ③正当化
- コンプライアンス教育、企業倫理の構築など
従業員の不正防止のために、まずは就業規則を整えましょう
以上を踏まえて、私は、従業員の不正防止のために、会社がまず取り組むべきは、やはり就業規則などの規定やルールを整えることだと思います。
不正を絶対に許さないという観点で社内のルールを作ることにより、それが企業文化の醸成や組織づくりに繋がっていくと思います。
また、その前提として、自社の中にどのような不正のリスクがあるのかの分析も重要になります。
ぜひ一度、不正のトライアングルの観点から会社を見直してみてください。
本日は、以上です。
次回も、不正行為についての話をしたいと思います。お楽しみに。
よい一日を。
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