有期雇用契約の有効活用のための就業規則③|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.19
有期雇用契約の
有効活用のための就業規則
-その3-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本題です。
前回紹介した福原学園事件から有期雇用契約を有効活用するための具体的な方策を考えていきたいと思います。
福原学園事件の理由からすると、従業員に対して、期間終了後に無期契約に移行するとの期待を抱かせてしまうと、実質試用期間であると判断される可能性が出てくることになります。
そこで、従業員に対して、そのような期待を抱かせない対策が必要になります。
そのためには具体的に何が必要でしょうか?
1.書面
まずは、「書面」です。
雇用契約書に「契約期間満了によって雇用契約が終了する」旨を明確に記載します。
また、有期雇用であることを説明し、雇い入れ前に雇用契約書を取り交わしておきましょう。
雇い入れ後に契約書の交付及び署名捺印等をすると、その当時の事情が考慮されてしまいますので、雇い入れ前に十分な説明を行い、その時点で契約書をまくことが重要になります。
また、この「書面」を無期契約の際に使っているものを一部修正して流用しているケースが散見されます。
その場合、契約期間の部分は修正しているのですが、他の部分の修正を怠ってしまい、無期契約に移行するとの期待を抱かせる場合があります(たとえば、定年の規定を削除し忘れる場合など)。
この場合、定年の規定があるということは、定年まで働くことができるという期待を抱かせる可能性があります。
ですから、書面については、流用せずに別途有期契約用の契約書の雛形を作成しましょう。
2.説明
次に、「説明」です。
雇用契約書をまく前に従業員に対して説明を行うと思いますが、その際、「とりあえず、1年で」、「一応、様子見で」や「うちを気に入ってくれたら、10年でも20年でも働いてくれ」など、期間満了後も契約が継続するかのような発言や今回の契約期間は雇用継続を前提とする勤務状況等の確認のための期間であるかのような発言は、絶対に控えてください。
従業員側から「期間満了後はどうなるのでしょうか?」などと質問された時についそのような発言をしてしまいがちですので、細心の注意を払いましょう。
3.就業規則
最後に、「就業規則」です。
もちろん、個別の雇用契約書の中で有期雇用契約者の条件を定めてもいいのですが、有期雇用を会社の制度として明確に定め、正社員登用制度など無期契約に移行するための制度を確立しておく方が有期雇用
期間が実質試用期間と判断されにくくなります。
まずは、自社の就業規則に有期雇用契約者専用の就業規則があるのかを確認しましょう。
その上で、なければ作成を、ある場合も従業員に無期契約への期待を抱かせるような規定がないかなどをチェックしてください。
■有期雇用契約を有効活用するために対策はしっかりと!
このような対策を講じた上で、有期雇用契約を有効活用すれば、会社側としては、有期雇用期間中に事実上その従業員の勤務態度や勤務成績等を把握して、
- その従業員に問題がなければ、期間満了後契約を更新するか、正社員への登用を打診する。
- その従業員に問題があれば、期間満了によって契約は終了する。
という選択ができることになります。
問題社員対策としても非常に有効な手段になりますので、ぜひしっかりと対策を講じた上で活用してください。
本日は以上です。
次回もお楽しみに。
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