フリーランス新法と就業規則⑤|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.13
フリーランス新法と就業規則
-その5-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本日でフリーランス新法については最後となります。
最後は、フリーランス新法によって改訂の必要性がある就業規則とその他フリーランス新法と関連のある点についてお話いたします。
■就業規則の改訂について
就業規則の改訂については、1点のみです。
フリーランスに対してもハラスメント防止措置を講じなければなりませんので、既存のハラスメント防止規程を改訂する必要があります。
最も簡単な改訂方法は、既存のハラスメント防止に関する規則の最後に項を追加し、
前各項に定める行為には、当社が業務委託をする個人事業主(フリーランス)に対する行為も含む。
と追記すれば足ります。
改訂は非常に簡単ですが、大切なことは改訂で「形」を整えるだけでなく、「形」と合致した「中身」も伴わせることです。
私が常日頃皆さんにお伝えしていることですが、特に労働法については、「形」と「中身」の両方が重要です。
「形(=就業規則)」だけ立派なものでも、「中身(=運用)」が出来ていなければ何の意味もありません。
今回の改訂をきっかけに、改めて自社のハラスメント防止措置全体を見直してみてはいかがでしょうか?
従業員教育はできているか、相談窓口は設置されているか、相談窓口に相談があった際の対応方法が決まっているか…などなど、ぜひチェックしてみてください。
弊社では、ハラスメント防止措置全体の構築のサポートもさせていただいておりますので、ご興味ある方はお問い合わせください。
■フリーランス新法に関連するガイドライン
最後に、フリーランス新法に関連するガイドラインを紹介いたします。
そのガイドラインは、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」です。
個人事業主等については、当然ですが、その健康管理は、個人事業主等自身の責任で行うことが基本です。
しかし、このガイドラインでは、注文者等も個人事業主等の健康管理のために配慮すべき事項が示されています。
その内容がこちらです。
- 長時間の就業による健康障害の防止・注文条件等の配慮
- メンタルヘルス不調の予防
- 安全衛生教育や健康診断に関する情報の提供、受講・受診機会の提供等
- 健康診断の受診に要する費用の配慮
- 作業場所を特定する場合における適切な作業環境の確保
こちらはガイドラインなので、違反したからと言って罰則などはありません。
しかし、今後、フリーランスで働く人の健康被害が増えてきたり、その健康被害の責任が委託者である会社にあると主張して損害賠償等が行われたりした場合、このガイドラインの内容が会社の安全配慮義務の内容として考慮される可能性もあります。
『フリーランスだから、自分の責任で健康管理しろ!』という考えが通用しない時代になることも考えられます。
また、フリーランス自身もより働きやすい会社の業務のみを受託する(雇用と異なり、フリーランスには仕事を選ぶ権利があります。)ようになり、優秀なフリーランスの確保のために会社側も働きやすい環境を整えなければならないかも知れません。
■フリーランスから選ばれる会社に
フリーランスは、働く側としても柔軟な働き方が可能であり、大きなメリットがあります。
また、会社側にとっても、フリーランスを上手く活用することで、社内にないリソースを外部に求め、必要なノウハウ・技術を取り込むことができます。
一方で、今回のフリーランス新法によりフリーランスの保護が強化され、フリーランスが会社を選ぶという価値観が広まっていくことも十分に考えられます。
フリーランスから選ばれる会社にする取り組みを今から実施することによって将来の競争力を強化できる機会にもなると私は思っています。
これまで紹介してきたことを活かして、フリーランスとの関係を是非見直していただければと思います。
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