どうする!?賃金規程②|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.08
どうする!?賃金規程
-その2-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本題です。
本日は、前回に引き続き賃金規程についてお話したいと思います。
前回、ハーズバーグの二要因理論から賃金規程は、
- 人材の確保(優秀な人材を採用するため)
- 既存の従業員の離職防止
という視点で構築することが重要であるとお伝えしました。
では、具体的にどのように構築していくのか。
まずは、賃金全体の構成を理解しましょう。
基本的にはこの構成で考えましょう(通勤手当は省略しています。)。
「あれ?うちの会社には、もっと手当がいろいろあるけど。」という方もいらっしゃるかもしれませんが、これまで多くの労働事件を取り扱ってきた私の経験からすると、
「手当の多い会社は、労働トラブルが多い。」
です。
私見にはなりますが、おそらく手当が多く複雑な賃金体系の場合、従業員側が賃金体系を正確に理解できず、自分に支給されている賃金の算定根拠がわからず、衛生要因である賃金に不満を抱き、問題社員化していくからではないかと考えています。
賃金体系は誰もが理解できるシンプルなものを目指しましょう。
ちなみに、従業員のモチベーションアップを図るために、一定の成果を上げた場合や会社が設定した条件を達成した場合に支給される給与や手当を設定している会社もありますが、業種によっては、この制度がむしろ従業員のモチベーションを阻害するという研究結果もあります(職種によっては一定程度のモチベーション効果を発揮する場合もあります。)ので、このような給与や手当を導入する場合は慎重に行いましょう。
■本給と仕事給
さて、賃金の構成がわかったら基本給を定めていきますが、このとき「本給」と「仕事給」の割合をどうするかを検討します。
「本給」は、勤続年数に応じた支給項目(定期昇給あり)とお考えください。
このように定期昇給をすることにより、既存社員の離職防止につながります。
一方で、「仕事給」は、評価によって貢献度等を反映させた支給項目です。
そして、この2つをどのような割合で支給するかを決めます。
- 本給:仕事給=8:2
- 本給:仕事給=5:5
などです。
この割合は会社から従業員へのメッセージになりますので、どのような従業員を求めているかで割合を決めていきます。
たとえば、長期的に会社に貢献してくれる人を採用したいとなれば、本給の割合は高くなりますし、成長意欲の高い人を採用したいとなれば、仕事給の割合が高くなります。
注意点としては、仕事給は評価次第で下がる可能性がありますので、従業員が不満を抱く可能性があります。
そのため、仕事給の割合を高くする場合は、しっかりと事前に従業員へ説明しておく必要がありますし、その評価も従業員が納得できるものにしておく必要があります。
■役職手当
次に、役職手当については、その額も重要ですが、役職者に対してその仕事内容をしっかりと伝えることがもっと重要です。
というのも、役職者として会社が求める仕事内容をしっかりと伝えることなく役職を与えた場合、会社が求めていない仕事をする場合があります。
たとえば、本来の役職者の仕事は、スタッフを管理したり、経営者の指示や方針をスタッフに伝達したり、スタッフの教育等を行ったりすることなのにもかかわらず、役職を与えた結果、「スタッフの代表として、スタッフの意見を集約して社長に伝えるんだ!」と頼んでもいない仕事をし出す人が出てきます(その結果、社内に労働組合のような組織ができてしまうことも・・・)。
現場の声に耳を傾けるのは経営者の仕事であって、役職者の仕事ではありません。
このようなことが起きないように、役職手当を支給する場合は、 必ず、役職者に求める仕事を明確に伝えましょう。
■賃金規程は評価制度と連動させましょう
最後に、賃金規程は、評価制度と連動させる必要がありますので、合わせて評価制度についても見直しが必要になります。
評価制度については、また、別の機会でお話したいと思います。
また、前回の冒頭でお伝えしたとおり、賃金規程は職種や社長の考えなどでもその内容は変わってきますので、会社ごとに個別に価値観を反映させたものを構築しましょう。
その際、労働トラブルの防止の観点から、今回と前回の内容を参考にしていただければと思います。
では、本日は以上です。
また次回。
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