従業員による不正行為を就業規則でどう防止するか②|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.21
従業員による不正行為を就業規則でどう防止するか
-その2-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本題です。
本日からは、多くの企業で発生し得る従業員の不正行為を就業規則を使って具体的にどう防止するのか、万が一不正行為が発生した場合に会社が適切に対処するためにはどのような規定を設けておくべきかについてお話したいと思います。
今回は、会社が従業員に対して業務用のパソコンやスマホを貸与する場合に、従業員による不正行為等を防止するために私的利用を禁止する必要があると思います。
まずは、そもそも、貸与したパソコンやスマホの私的利用を禁止することはできるのでしょうか。
結論からお伝えすると、「できます」。
法律的な根拠としては、雇用契約上労働者に課せられた職務専念義務の一環として、私的利用を禁止することができると考えることができます。
また、貸与したパソコンとスマホは会社の所有物になりますので、所有権等に基づく管理権の一環として、私的利用を禁止することができると考えることもできます。
いずれにしても、就業規則の規定がなくとも、貸与したパソコンやスマホの私的利用は当然に禁止されると考えられます。
ただ、従業員に対しても、具体的にどのような行為が私的利用として禁止されるのかなどを明確にしておく方が、不正行為防止の観点からは有効だと思いますので、就業規則の服務規律に明示するようにしましょう(なお、服務規律ではなく別途「貸与パソコン・スマートフォン利用規定」のような規定をおいてもオッケーです。)。
規定例としては、こちらを参考にしてください。
第●条
従業員は、会社が貸与しているパソコンやスマートフォン等の電子端末を業務に必要な範囲内でのみ使用することができる。
私的なメール、メッセージ等のやり取りや会社が許可していないアプリケーションやファイル等のダウンロード等、当該従業員の業務とは無関係な私的利用は一切禁止とする。
なお、より実効性を高めるためにも、懲戒処分の規定と紐づけておきましょう。
ただ、実際に違反行為が発覚したとしても、その内容が軽微(私的利用によって従業員の業務に支障を来たしているとは言えない程度のもの)については、懲戒処分に付することが不相当となる場合もありますので、あくまでも従業員に対する牽制という趣旨で捉えていただいた方がよいかと思います。
たとえば、子どもの学校等で緊急連絡先の指定が必要な場合、プライベート用のスマホよりも、会社から貸与されたスマホの方が勤務時間中に気づく可能性が高いことから、会社から貸与されたスマホの番号を登録するという場合もあると思います。
これも厳密には私的利用ですが、懲戒処分にするほどの違反とは言えません。
本日は以上です。
次回は、貸与したパソコンやスマホのモニタリングが可能かについてお話したいと思います。
お楽しみに。
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