人材確保の観点から就業規則を考える-奨学金代理返還制度②|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.05
人材確保の観点から就業規則を考える
-奨学金代理返還制度その2-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本題です。前回に引き続き、奨学金代理返還制度についてです。
今回は、奨学金代理返還制度の具体的な支援開始までの手続きと支援方法についてお話します。
奨学金代理返還制度を利用する場合は、必ず従業員からの申請を求め、会社が審査をして決定するという手続きにすべきです。
というのも、従業員ごとに事情を確認した上で、毎月どのくらいの代理返還をするのか、上限額をいくらにするのか、支援期間をいつまでにするのかなど個別具体的に会社が検討し決定すべきだからです。
そのためにも、従業員からの申請に際して、検討に必要な情報を開示してもらう必要があるからです。
支援方法については、当然ですが、会社から機構へ直接返還すること、及びその返還金はあくまでも給与ではないことを明示しましょう(税法上や社会保険上、給与とみなされないようにするためです。)。
また、支援制度を利用する場合、従業員が退職したとしても、会社は代理返還したお金を従業員に対して返せとは言えませんので、その旨も就業規則に規定しておくとよいでしょう。
最後に、支援制度を導入する場合は、必ず支援を停止する場合の要件も規定してください。
これがないと、無用なトラブルに発展する場合があります。
以上を踏まえ、以下のように規定することをオススメします。
2 会社は、前項の従業員からの申請を受理した場合、申請書及び提出書類を審査し、申請者の支援制度の利用の可否、支援制度の利用が可能な場合の支援額及び支援方法等を決定し、申請者に書面により通知する。なお、会社は、支援制度の利用の可否等の判断に必要がある場合、申請者に対して、追加の資料提出及び面談等を求める場合があり、申請者はその求めに対し、速やかに応じなければならない。
2 支援額は、利用者一人につき総額●万円を上限とし、支援期間は●年を上限とする。
2 利用者が、支援制度の利用中、第●章に定める服務規律に違反する行為または第●章に定める懲戒事由に該当する行為があった場合、会社は支援制度を停止することができる。会社が、利用者に対し支援することが不適切と判断した場合も同様とする。
今回は以上です。
奨学金代理返還制度は特に新卒採用時の人材確保の点でその効果を発揮します。
また、既存の従業員の離職防止の観点からも効果があります。
前回と今回の話を踏まえて、そのメリット・デメリットを踏まえて、導入を検討いただければと思います。
導入される場合は、規定例を参考に制度を構築していただければと思います。
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