人材確保の観点から就業規則を考える-奨学金代理返還制度①|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.04
人材確保の観点から就業規則を考える
-奨学金代理返還制度その1-
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
この度、ウィンベル法律事務所のホームページが完成しました。こちらでも定期的にコラムを投稿しています。
現在は問題社員対策を連載していますので、ぜひ興味のある方はこちらもご覧ください。
コラムを読むさて、本題です。
本日からは、人材確保の観点から就業規則を考えたいと思います。
現在、皆様も実感があると思いますが、人材不足ですよね。
特に、中小企業においては顕著なのではないでしょうか?
いずれにしも、人材確保が会社の課題の一つになっているところも多いと思います。
そこで、人材確保の観点から就業規則を活かすことができないかを考えたいと思います。
■奨学金代理返還制度について
本日は、「奨学金代理返還制度」です。2回に分けてお話したいと思います。
従来から奨学金の返還を支援する制度を導入する企業はありました。
その際の方法としては、従業員へ支給する給与に奨学金の返済相当額を上乗せして払うという方法でした。
なぜ、このような方法だったかというと、奨学金の貸付等を行っている日本学生支援機構が企業からの代理返還を認めていなかったからです。
しかし、令和3年4月から日本学生支援機構は、企業による代理返還の受付を開始しました。
その結果、企業は直接日本学生支援機構に返還することができるようになり、便利になりました。
奨学金代理返還制度は、特に若年層の人材の確保とその定着に資する制度です。
しかし、デメリットもありますので、その導入においては、デメリットを把握した上で制度を構築する必要があります。
■奨学金代理返還制度のデメリット
奨学金代理返還制度のデメリットは、会社が代理返還した既払金はどんな事情があれ従業員には返還を求めることができないという点です。
そこで、制度設計をする際には、このデメリットによるリスクをどこまで受け入れるのかが重要になります。
たとえば、試用期間中は支援をしない、入社から5年までしか支援しない、勤続年数が一定年数を超えてから支援を開始する、代理返還は毎月一定額にするなどいろいろな方法がありますので、各会社の状況に応じて設計をしましょう。
就業規則に規程を設ける場合の注意点としては、福利厚生として位置づけることです。
賃金規程の中には入れないように注意しましょう。
賃金規程に入れてしまうと法的に代理返還した既払額も給与であったと解釈される余地を残してしまうからです。
具体的には、次のような文言で定めるのをオススメします。
2 支援制度は、機構の代理返還制度を前提とするものであるため、機構が代理返還制度を廃止した場合には、支援制度も廃止する。
3 機構の代理返還制度に変更があった場合、当社はその変更内容を考慮した上で、必要に応じて支援制度も改定する。
今回は以上です。
次回は、具体的な対象者の審査方法や支援方法について解説したいと思います。
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