就業規則作成のポイント|ウィンベル式無敵の労務管理マガジンVol.01
みなさん、こんにちは。弁護士の山口です。
本日から会社経営者の方や社労士の先生方に役に立つ、労務管理に関する情報を発信していこうと思います。
最初は、就業規則についての話を連載形式でお話していきたいと思います。
現在、私は、会社を守ることに特化した最強の就業規則を作成しようと考え、仲間の弁護士数名とともに就業規則の作成をしております(完成しましたら、皆様にもご案内いたします。)。
その作成過程をこのメルマガでお届けできればと思います。
■就業規則作成のポイント
初回の今回は、「就業規則作成のポイント」についてお話したいと思います。
就業規則の作成は、正直、弁護士のメイン業務ではありません。
そこで、今回の就業規則作成の我々の最初のミーティングでは、「弁護士が作る就業規則のメリットは?」というテーマで話し合いました。
その内容を共有したいと思います。
労働基準法上、就業規則には、必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項(始業・終業時刻、休日、休暇、賃金に関する事項など)と制度として採用するかしないかは会社の自由だが採用する場合には必ず記載しなければならない相対的必要記載事項(退職金に関する事項、表彰・制裁に関する事項など)、そしてこの2つの事項以外で記載自体が会社の自由に委ねられている任意的記載事項があります。
ここで、多くの方は、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項に目が行きがち(労働基準法目線)ですが、本当に重要なのは、任意的記載事項です。
そもそも、就業規則は、労務管理を適切に行い、従業員との紛争を予防することを目的に作成します(このような目的があるため、作成義務がなくても作成することをオススメします。)。
そして、この就業規則を上手く規定し、活用することで、従業員の生産性が劇的に改善したり、問題社員を苦労せずに排除できたり、会社経営において非常に有益な効果を生み出すことができます。
その際、重要になってくるのが、任意的記載事項なのです。
就業規則は、従業員の労働条件や職場のルールを定めた規則のことですが、これは従業員との雇用(労働)契約の一部になります(つまり、就業規則に記載された内容は会社及び従業員にとって、権利であり義務となります。)。
ここで、少し契約について話をしたいと思います。
契約について、民法では大きな一つの原則があります。それが、「契約自由の原則」です。
これは、契約するか否か、誰と契約するか、契約するとしてどのような内容で契約するか、これらは原則として当事者が自由に決めることができるという原則です。
この契約の中には、当然ですが、雇用契約も含まれます。
ということは、従業員との契約内容は当事者間で自由に決めることができるという訳です(もっとも、最低限守るべきルールは労働基準法や最低賃金法等の法律で決められています。)。
そうすると、雇用契約については、その内容である就業規則は自由に定めることができるということになります。
前提の話が長くなりましたが、就業規則の適切な労務管理と従業員との紛争防止という目的を達成するためには、自由に記載ができる任意的記載事項が極めて重要なのです。
そうです。本当に就業規則を会社の武器として活用しようと思うのであれば、労働基準法目線に加えて、民法目線(任意的記載事項)で作成することが求められるのです。
■従業員に退職代行業者の使用を禁止することはできる?
たとえば、最近話題の「退職代行業者」。
経営者の本音は、「こんな業者使わずに直接言いに来いよ」でしょう。
では、従業員に退職代行業者の使用を禁止する条項を就業規則に入れることができるのか?
答えは、できます。
だって、就業規則は自由なんですから。労働基準法等にも希望する従業員には退職代行業者を使わせなければならないなんて法律もありませんし。
その会社が退職代行業者は使ってほしくないと思っている(そのような価値観がある)のであれば、それを就業規則に定めることはできます。
もちろん、そのような規定を置いているにもかかわらず、退職代行業者を使ってきた従業員に対して、何か有効な懲戒処分等ができるのか言われれば、正直難しいでしょう。
しかし、そのような規定を置くことで、会社としての価値観は従業員に対して表現できます。
従業員に対する牽制の効果もあるでしょう。
ただ、「退職代行業者の使用を禁じる」というあからさまな記載だと会社に対して、悪い印象を抱く従業員もいるかも知れませんので、私なら・・・
従業員は、その労働条件に関し希望、要望等がある場合には、第三者を介して申し出てはならず、直接本人が会社に申し出なければならない。
このような条項を置くことで対応します。
このように就業規則は、その目的に応じて、様々アレンジすることができます。
経営者の方は、ぜひ今一度自社の就業規則を見直していただき、経営理念や価値観が就業規則に反映されているのかをご確認ください。
そして、もし反映されていないのであれば、民法目線での就業規則に改訂されることをオススメいたします。
では、また次回。